「イトウの恋」中島京子 [読書感想]
イザベラ・バート(以前読んだ多和田洋子さんの作品にも出てきた
よね)の「日本奥地紀行」に想いを得て書かれたとある通り、I・B
に同行した通訳の伊藤亀吉側からの手記なんだよ話の中心が。
で、その手記が他人の家から見つかる。発見したのが、いかにも
草食系男子って感じの中学教師(この男の祖父が手記を持ってい
たのよ、まあその理由が伏線として語られてるけど)と、一人しかい
ない郷土史部の中学一年坊主(シゲル作品の大ファン)と、伊藤亀
吉のひ孫の女シゲル(劇画作家)の3人で、途中で途切れている手
記の続きを探すという話なんだけどさっ。
なんで後半部分がないのかというのが、この伊藤亀吉の子3代に亘る
「恋」というか「生き方」に関係してくるのよ!!
で、この手記に出てくるDという女(夫を殺し若い男に走り・・・)も、
このシゲルが劇画作家だっていう職業もね、ちゃんと意味あるよね(パタ
ーンで書けるとかね)、なるほどー。
後半部分はね、あったのよー(さて何が書いてあるのかフフフ)
伊藤亀吉が娘に言ったのは「不可思議な人生を生きろ」、これ作者の主題
かな。私には「つまんない男と結婚すんなよ」って言われたような感じ。
男が書く不倫小説(例えば渡辺淳一に代表される)と、女が書くこういったもの
と何か「恋」そのものの次元がぜんぜん違う。こういう言い方は失礼か。男・女じゃ
ないね。中島京子という作家の力量だね。

「小林秀雄の恵み」橋本治 [読書感想]
忘れる、あれ?これは何だったけ?いつのまにどこにたどり着いたの~
と思っているうちに、ラストに行き着いてしまった。
この本はねー小林秀雄の書いた「本居宣長」を中心に、これはこうじゃーない?
って反論しているじゃないのよ!だから「小林秀雄」の「恵み」ったって、“あなた
の書籍を読んで納得できないものが生じましたので自分なりに検証しまして、
その結果がこういう本となりました。”という「小林秀雄の恵み」という本が完成し
たことが「恵み」ってことなのよね。なーるほど。。。
「本居宣長」って「もののあはれ」の人ってだけ知っていたけど、どのあたりの時代
の人かも知らなかったし、歴史から消えかかっているような国文学者を今更引っ張り
出してどうすんのよ?って思ったけど、それでもこの本はおもしろかったよ。
読者を「へえー」と思わせたらその本は成功よね。
橋本治でも小林秀雄は難しいようで(だったら世の中の大半の人は理解できないよ
ね)、でも小林秀雄の確立した「評論」というものが、読者をいずれかへ向かわせる
トンネルで、そのトンネルがどこへ抜けるかは分らないし、トンネルを抜けることが「体
験をする」ことなんだよと橋本治がこの本で言ってたことはなんだか難しいけど理解で
きた。でも小林秀雄よりもむしろ「本居頼長」に興味を持ってしまったよ。和歌山の彼の
墓に行きたくなったもん。

元「ふきのとう」の山木さん [つれづれ日記]
ああーなつかしい、「ふきのとう」の歌を山木さんの声で聴きましたー。
何年ぶりだろう、もしかしたら30年ぶり・・・1/3世紀オオー。
やっぱり歳をとったわよね(私がね)。学生時以来ぜんぜん振り向きも、
意識にもなかった「ふきのとう」(特に山木さん)に、何故か昨冬位から
「山木康世コンサート」という文字が目に入る、でもまだ行動しない、
そして今回「無料コンサート」が目に入る。
これは見に来いという彼からのテレパシーです。
札幌の三吉神社大祭ライヴを10年間続けて行っていたようなんだけど
まったく知らなかった。
30年ぶりの山木さんの登場は、髪・体型が昔のまんまでなんだかうれ
しかったなー。
この世代の人って歳相応に皆髪を短くしてしまってるでしょ、でもあの
肩に届く感じの髪型が当時あこがれの“山木さん”そのまんま。
近くで見ると歳相応なのかもしれないけど。ただ違うのが、しゃべる。
一人でライヴやるようになるとしゃべらない訳にはいかないもんね。
それも携帯を向けるオバサマ達を前にポーズを取ったり“ちはる”という
名前を聞いて“嫌な名前だねー”って言ってみたり、しゃべりはすっかり
おじさんっぽい。寡黙な山木さんは消えてました!!
ライヴはもう一人ギターの人を携えて、相変わらず“情景”を歌う歌詞が
なんだか素朴でいいなあー。このピュワーさがもう時代と合わない、合わ
ないからこそ新鮮に映るのよね。(ただのメランコリー?!)
7割位ふきのとう時代の歌で、思わず口づさんでる私は“憧れのお兄さん”
山木さんを見つめる中学生にもどってました。
「49日後」札幌公演 [演劇]
知らない俳優で(古田新太、八嶋智人など有名みたいね)
7,500円は高いなあ~と思ったけど、どうやらチケット入手困難な
人気作品だったようです。
そんなド素人より内容と感想をひとつ。
自殺した一人暮らしの老婆の家を処理する作業会社の4人と、
その依頼業者の営業らしき女性1人で、家を片付け終えるまでの話です。
家は古く、中は血が飛びこびりつき、そのうえゴミの山、って聞いたら
暗そうでしょ。
でもセットの暗さとは裏腹に作業員4人が、テンポがいいし笑わせる。
体が血でどろどろになりすごい形相で現れる、わーわー騒ぎながらも老婆が
手首を切ったというお風呂を交替で入り、老婆の残した服を使う。
しかし何で自殺したんだ?ってミステリーになってゆくんです。
ゴミの山から出てきたもの、そして噂から作業員4人は分かってしまう。
ひきこもりで家庭内暴力であった息子。たぶん老婆が息子を殺しバラバラに
した?!そして営業の女はたぶん妹・・・
けれど4人は、それを確かめたり告発したりはしない。仕事が終わったーと
だけ言って帰ってしまう。
こういう内容って、本になると暗くて重たいものが残ると思うのよ。演劇だと表現
する動作や効果が加わって笑えるし、後味も悪くない。でも言葉(セリフ)が聞き
取れなかったりもするので、言葉の重要性は本よりはないよね。
演劇の表現のおもしろさがちょっと判りました、また見たいです。
更年期障害には斎藤美奈子さんの本 [読書感想]
で、「年齢的にまだ早い。」という言葉と”パニック障害”の薬を出されて
かえって不安をあおられ動揺してしまった。
医者から深刻な顔で「最近何かなかった?」と聞かれると思いあたらな
かったけど気になることの2つや3つはあるもんだし、今までストレスで
あったことが一気にあふれ出してきたのかなあ~とか考えちゃってね。
・心臓がバクバクする、圧迫感
・夜中に不安で目がさめる
・今までにない落込みイライラ感
・足の異常な冷えと凝り
・手足のしびれ
・手首や足首、指の関節の痛み
どう考えても更年期障害の症状だよね。意外と医者って知らないものよね。
”ホットフラッシュの症状が出てないから更年期障害じゃない”と、こう言わ
れたことで、ああこの医者無知、婦人科行く踏ん切りがつきました。
少しづつ1年前くらいから兆しはあったんだけど、何か体調悪いなあーって感
じから明らかにこれは更年期障害だと自覚したのは「心臓の異常なバクバク」
内科行ったおかげで遠回りしてしまったけど、婦人科で出してくれた「加味逍
遥散」を飲み始めて1ケ月、やっと本を読めるようになりました。
こんなに大変な病気だとは思ってみなかった。要するに自律神失調症だもんね。
よく更年期障害の時はゆったりとした気持ちで趣味なことでもしましょうなんて
書かれているけど、「ゆったりと」なんてしたらかえって気が滅入ってしまって、
行動した方が忘れられました。で、本なんてぜーんぜん読める状況じゃ
ないですよー。落込みとイライラがあってその上心臓がバクバクしてぜいぜい
してるのにどうして読めんのよー。
人それぞれ症状は違うんだろうけど、10年わずらってるとか、耐えられなくて入院
したという人の話も聞くし、世間では大変な病気に取られてない感じがあるけど
大変な病気だよ、経験して初めて判るものよね。完治には長くかかるのかなあ~
でもまあ、本は読めるようになりました。
こういう時は、あまり頭を使わなくて笑える本。そう考えると、斎藤美奈子さんの本
ですね~。ちょっと古いけど「読者は踊る」読みましたー。でも内容は今読んでも新鮮。
大御所に対して、業界の人なら普通言えないことを庶民の感覚からバッサリがいいよね。
芥川賞について”新人作家から自分たちの仲間に入れてやってもよさそうな人材を一方的
にピックアップする一種の就職試験”ということで「芥川賞らしい」選択だったと
(柳美里と辻仁成がW受賞した当時の選考委員達ですけど)ん~やっぱり尊敬するわあ~。

「植物診断室」 星野智幸 [読書感想]
07年前半の芥川賞候補作品。この人が受賞すると思った人が多かった
ようだけど取れませんでしたねー残念。
主人公は40代の男、人生それなりに充実していて独身に不自由を感じるこ
ともない。
だから強い結婚願望もないし、ただ単に自分に合う人と出逢わないからと
言う。独り身としちゃーよく解るんだけど、何か共感したくないものがあ
ってねー。
普通の平凡なサラリーマンだったらことごとく社内で聞くであろう”あの
人は結婚していないから”とか”子供がいないから”を自信をもって跳ね
返すものがあるんだろうと思ったんだけど、でもあの植物診断のカウンセ
ラーに通うということは現状に対しての迷いもあったんだろうね。
で、対する女は別れた夫は子供の前で父権をかざすDVで、夫と別居中に何
やら別の男の子供まで生んでしまう。意志の弱そうなことしておいて離婚
が成立すると、自分にとって”男”という父親とか夫という役割を持つ人
はもうこりごりと割り切って、子供の教育上だけに大人の男のサンプルを
提供したいということで、この40代独身男と交際する。
うーーーん。なんだか独り身なのでね、解りません。新しい家族(作者は家
族とはいいたくないような感じ)男女のあり方の一つの方向性を書いたんで
しょうがね。
実際こんなにあっさり、男女がお付き合いしてゆくのは成熟してないとね、
それにしても私はそれだけの距離感で付き合ってゆくのも虚しいような気が
します。だからといって性愛に行くのもありがちなケースで今時つまんない
し、この作家だったらそういうの書かないだろうしね。
男女のあり方ってそれこそどんな形があってもいい時代だから、関係を書くっ
て難しいね。
グルメ男か?バレンタイン売り場の男は!! [つれづれ日記]
丸井今井のチョコレートの祭典、サロン・デュ・ショコラを覘いてきました。
ジャン・ポールエヴァンやらアオキサダハルだの普段札幌では買えない
有名どころのチョコが勢ぞろい。
もちろん世界レベルですのでお値段も・・・お解りでしょう。
チョコとはいっても高級品、まるで宝石のような展示、パッケージも一流品
にふさわしい心遣い、ここの袋を持つとあなたもお嬢様って感じです。
それなのにお店(会場)は、人でごったがえしロープで仕切ているところも
あり、まるでバーゲン売り場。
そして、隣接しているショコラカフェは蝶ネクタイをした給仕がいて、テーブルや
椅子も一見パリ風、でもOPENスペースなので、あのバーゲンの雑踏を見なが
ら味わうという雰囲気も何もあったもんじゃありません。
(もう少し考えてくれよ。と思うけどデパート側は集客があればいいんでしょうね)
最近の傾向で思うのは、あの雑踏の中男の人がぽつりぽつりといることでした。
それもカップルじゃなくて一人で。
有名所の高級チョコをお買い上げし、売切れの商品を指し「これは明日入るの?」
とか聞いているのよ。
女の集団もなんのその、一心に高級チョコを買い求める根性ある(?)男は、ただ食
したいというだけのグルメなのでしょうかねー。
「ミノタウロス」佐藤亜紀 [読書感想]
やっぱりすごかったー、もう脱帽。プロの中のプロって感じの作品。
私の表現力では言葉に出来ないです。感嘆詞しか出てこない。
女性作家の作品の場合、気持ちが共感できたり、題材が身近に感じる
ものが多いから、ああーなんか分かるなあ~って部分で好きなんだけど、
この人の作品は、とてもとても身近ではありません。共感もとんでもないし、
とても距離を感じます。壮大な映画を見ている感じ、それもカンヌのグラン
プリ作品を見ている感じ。芸術的で一般大衆になんかぜんぜん向けてな
くて・・・・今回のは特にそう感じました。
今までの作品(とはいってもバルタザールと天使シリーズしか読んでません
が)だったら、どこか主人公にユーモアがあるしラストもフフーンって鼻を鳴ら
す感じだったけど、この作品は主人公のタイプは似ていてもラストがね・・。
愛だとか孤独だとかを言っていられる小説がまだまだ若いね、甘いよ!と
感しられてしまうほど、涙をながせたり悲劇だとか言っていられる小説を
はるかに越えたところにこの小説は来ちゃった感じです。
ミノタウロスってそもそもギシシャ神話をちゃんと読んでいないから、人間の肉
を食べる半人半牛としか知識がないんだけど、それでも何となくタイトルとして
分かる感じです。”獣性”ですね。
やっぱりこれもロシア革命、戦争によってロシアの地主の悪ガキがどうなって行
くのかという話です。戦争に翻弄される人間を描いた小説はいっぱいあるけど
ここまで、それも年代の近い日本人の女性が(ゴメン偏見ある言い方して)書ける
ことがもうすごい・・・・というよりも男性作家でここまで書ける作品を読んでない。
私はこの作品を再読したくはないです、というよりも読めないです。
精神がタフでないととても読めない。読み終えて1日は打ちのめされてました・・
なんか甘ーい、甘ーい本を読んで中和しないと回復できない感じでした。
でも読み始めるとやめられないですよ・・・
ペルセポリス「映画」 [映画]
今年初めての映画。
実際今の時期何を見ようか迷ったのよね、情報もあまりなくて
すごく見たいというものがなかったんだ。候補は3本。
会社を出る直前にアミダで決めました。(ああ~決断力のない私)
「ペルセポリス」はレディスDAYなのに10人程しかいませんでした。
フランス映画なんだけど、イラン人監督自身の自伝的内容を
アニメで綴った話です。
イランとかイラクの女性って、皆あの黒いベールや服を喜んで着てい
る厳格なイスラム教徒という、近づきがたいイメージを勝手に持って
おりました、偏見ですね。
パンクが大好きで、オシャレモお化粧もしたい、友達と隠れてパーティ開
いてお酒も飲むし、闇で売ってるアイアンメイデンのテープも買っちゃう。
国が戦争をおっぱじめて、身内が政治犯にされ逮捕・処刑される中、博識
の理解ある両親を持つ彼女は上流階級だからヨーロッパに留学(避難)す
ることが出来たんだけど、若いからヨーロッパへのあこがれもあったでしょう
が、それこそ戦争中自由の国に行くってことは育ってきたものを全て(家族も
含めて)失う(捨てる)覚悟を伴っていたんだよね。
現在フランス在住の映画監督ということは、ある意味人生の成功者と言える
んでしょうけど、強いよねー。分からないけど女だから彼女はヨーロッパへ行けた
のかなあーとも思いました。
男だったら国のことよりも、自分自身の人生を大事にしたいからヨーロッパに留学
するというのは、国のことを思い身内に政治犯まで出していて果たして出来ただろ
うかと思ってしまう。
(というよりも戦争なんだから兵隊にとられてしまうか。でも、今の日本人の男なら
国よりもまず自分自身の人生だろうね。)
いまさらだけど「追悼」ヴォネガット!! [つれづれ日記]
今、気になる読みたい本が3冊。
「小林秀雄の恵み 」 橋本 治
「ミノタウロス」 佐藤亜紀
「国のない男」 カート・ヴォネガット
知らなかったのよ~。橋本治と佐藤亜紀の新刊が出ていたこと。
朝食(昼食)を摂りながら北海道新聞の書評を読むのが私の日曜日の楽しみの
一つなんだけど、どれも載らなかったと思う。
ヴォネガットが亡くなったと知ったのは夏くらいかなあ、追悼特集を目にして。
(だいたいヴォネガットみたいな偉大な作家が亡くなって新聞に載らない。これっ
てSF作家だから?)大好きでかなり傾倒した作家だったんだ。
大通にある「紀ノ国屋書店」に店員のポップで「世界を救うのは愛ではなく親切だ
と教えてくれたのはヴォネガットだ!」と書いてあって、あっこれ爆笑問題の番組
「日本人の教養」でどっかの精神科医と対談していた時に精神科医が同じ事を言っ
たんだ。ちょっと心に残ってたんで、なーんだヴォネガットの言葉だったんだと改めて
知りました。(そうえいば大田光はヴォネガットファンだよね。)
で、「小林秀雄の恵み」が出たのを知ったのは、ほぼ日の糸井重里の日記で。やっぱり、
おじさん達に絶大な人気があるね「小林秀雄」って、橋本治まで書いちゃうんだもん。
佐藤亜紀はもう待ってましたー。この人すごく上手いエンターテナー作家で、臨場感あり
スピード感あり、登場人物もすごくいいのに、世間からはあまり評価されていないような気
がしておりました。これが出たのを知ったのも「紀ノ国屋書店」。「本の雑誌」で07年度の
ベスト1に選ばれたというポップを見て、うれしいです。もっと世間に知れて欲しい人ですね。
ここまで好きと述べておきながら、何とさっそく大通カウンターへ(図書館だよ)やはり「ミノタ
ウロス」はかなりの待みたい。「小林秀雄の恵み」は無い。?!(出たばっかりなのかなあ?)
札幌市の図書館とあろうものがないなんて・・・・
で、やっぱりヴォネガットは昔お世話になってかなり影響を受けた作家なので、哀悼の意味で
お買い上げとします。(全部買いたいんだけどね。何せ部屋が6畳、本もあふれているのよ。
捨てられない性格だしー、ゴメンネー。印税に貢献できなくて・・・)







